目を覚ました時には、私はICUのベッドに寝かされていました。

なんでも、例のメッセージを竹中さんに送信した後、
スマホを握りしめたまま、病室のベッドの上で意識を失っていたそうです。


一時は危篤状態に陥り、本当にかなり危ない状態だったそうです。

それまでも三途の川を渡りかけたことは何度もありましたが、今回はなかなか持ち直せず、担当の先生や看護師の方々も「今回はもうだめかもしれない」と思ったそうです。


そして、ようやく目を覚ましたとはいえ、高熱も続いていれば血圧も安定しない状態で、意識はもうろうとしていました。

けれど、しっかりとこれだけは覚えていました。


ー私は竹中さんにフラれたー


涙ばかりがこぼれました。


やがて、心が死んだまま、容態も一応安定したということで、もともと居た一般の個室に戻されました。
ICUに入ってから、約一週間ほどの月日が流れていました。


落ち着いたころ、奈美ちゃんがお見舞いに来てくれました。

食欲がなく、奈美ちゃんに差し出されたケーキを、私はどうしても食べる気になれず、フォークを握ったままの手は、奈美ちゃんから差し出された時そのままでした。


「なに?食べないの?」

奈美ちゃんは私に問いかけました。

「ごめんね。食欲がないんだ。」

私は答えました。
すると、奈美ちゃんは無言で立ち上がり、私のケーキを自分のフォークで掬い、
空いた手で私の頭を掴み、無理やり私の口にケーキを放り込みました。

あまりに突然だったので、私はむせこんでしまいました。


「あんたねえ、食べないと体力だって戻らないし、殴り込みにだって行けないよ?」


……殴り込み?

どこに殴り込みに行くんだろうか…。
私が考え込んでいると、奈美ちゃんは話を続けます。


「竹中の奴、一発殴らないと私の気が済まない。
しろをこんなにして!別れ話をするにしたって、時期を考えろって話だよ!」


ーそっか、奈美ちゃんは竹中さんに対して怒ってるんだー


「奈美ちゃん、ありがとう。私のために怒ってくれて。」

口をついて出た言葉は、感謝の言葉でした。
しかし、奈美ちゃんは続けます。


「あんたのためだけじゃないよ。私もあの男は個人的に許せない。
許す価値もない。」


聞くところによると、竹中さんは奈美ちゃんに、私と別れたことを伝えていたそうです。

奈美ちゃんは、あまりに唐突だったこと、そして時期も考えなかった竹中さんに腹を立て、理由を問いただしたそうです。

おおむね、私に話していた内容と同じでしたが、奈美ちゃんはどうしても竹中さんの考え方、行動が許せず、さらに問い詰めていったそうです。


そして、最後の誠意のつもりだったのでしょうか。
竹中さんも奈美ちゃんからの問いに、素直に答えていたそうです。


「辛い話になるかもしれないけど、あんた今聞きたい?」


少し迷いました。
もしかしたら、本当に怖い、耳をふさぎたくなるような事実が隠されているのかもしれない…。

けれど、私はこれ以上、長く落ち込んだ日々を過ごすのは嫌でした。
苦しい現実から目を背ければ、背けていた時間の分だけ、私は立ち直れずにいるんじゃないか、そう思ったのです。


「奈美ちゃん、お願い、聞かせて。
どんな内容でもいいから。」


私は、すべての事実を受け入れる覚悟をしました。