「竹中の奴に、説教ついでに事情を聞いてきたよ。」


やはり、奈美ちゃんからの話というのは、うりえるさんとの間にあったことの全容のようです。

「あいつさ、うりえるの本当の職業ばらしたらうろたえ始めてんの。
初めは信じてなかったけど、証拠を送り付けてやったら、本当にビビっちゃってねえ。
本当に馬鹿な男だよ。」


これから、そのうりえるさんとの全容について明かされるのだろう。
そうすれば、私の中でも、一つ気持ちの区切りがつくかもしれない。

私は居住まいを正して、奈美ちゃんの言葉に耳を傾けました。


「とりあえず、あいつはどうしようもないバカでさ。うりえるの言うことを端から端まで信じちゃってたわけよ。」


うりえるさんの仕事のことも、本当に知らなかったそうです。
夜に連絡が取れなくなるのは、寝ているか、飲み歩いているものだとばかり思っていたそうです。

ただ、竹中さんも初めは浮気をしようと思ってうりえるさんに近付いたわけではなかったようです。

うりえるさんが住むのは福岡。
うまいこと自分を信用させて、時期が来たら、自分の福岡のつてを利用して、うりえるさんを売ろうとしていたそうです。


しかし、うりえるさんは既にそういったお仕事をしています。

そして、うりえるさんのほうが一枚上手でした。


竹中さんに事実かどうかもわからない、自分の壮絶な生い立ちについて語りだしたそうです。

所詮はネットの世界です。
嘘なんていくらでも付けます。
けれど、この生い立ちというのが、同じく悲しい生い立ちを持つ竹中さんの心に響いてしまったようです。

初めは同情心から、やがてはそれ以上の関係になっていったようです。


しかし、それを聞いた奈美ちゃんが黙っているはずがありません。

「へえ。じゃあその本当かどうかもわからない生い立ちとやらに絆されて、何の罪もないしろを振ったわけね。
浮気をしないって約束も破って。
病気で体も思うようにならなかったしろを置き去りにして。

あんな女の口車に乗せられてねえ。
女の口車に乗せられるようじゃあ、女を扱う仕事なんてできやしないでしょ。素人でもわかるだろうが。」


竹中さんは何も言えなくなってしまったそうです。
けれど、竹中さんも反論しようとします。

「でも、うりえるがー」

「うりえるが、何?うりえるが何を言おうが、どこでどんな環境で育っていようが、
それこそ仮に本当にひどい過去を背負っていようが、
てめえだけ綺麗事ぬかしていい人ぶって、浮気していい理由になんかならねえんだよ!!」


奈美ちゃんの一喝に、竹中さんは今度こそ反論ができなくなってしまいました。


「僕はどうしたらいいんでしょうか。
謝るにも、合わせる顔がありません。何よりも、うりえるが今はいます。
そんな僕の謝罪を、しろは受け入れてくれると思いますか?」


消え入りそうな声で、竹中さんは奈美ちゃんに尋ねました。


「まあ無理だろうね。だって、しろもうりえるとのことは知っているし。
あの子、見つけちゃったんだよ。あんたがこれ見よがしにペアでアカウント作っちゃってるのをね。
私が教えるよりも前に知っていたから。
そして、浮気されたことも知ってる。

しろを頑なに日陰者扱いして、うりえるやれんを持ち上げていたこと、あの子は全部知っているんだよ。
れんの時はあの子も許したけど、あんた、もう浮気はしないって約束して付き合ったらしいじゃないの。
それを、うりえるとかいう素性もわからないような女を引っ提げて頭を下げに行くわけ?
私なら受け入れないね。どうかしてるよ。それで許してもらおうなんて。」


確かにその通りでした。
今、もしこの場に謝りにに来られても、聞き入れることはできませんでした。
もし、顔を合わせようものなら、うりえるさん共々殴りかかっていたかもしれません。
それくらい、私の心は荒んでいました。