食事が済んだあと、場所を変えて、私たちは話の続きをしました。

「竹中は、もううりえるとは終わりにしたいらしいよ。」

それはそうだろうなと、私も思いました。
強気な発言も多いし、巨星だけで生きてきたようなところもある男ですが、
今回ばかりは巨星の晴れる相手ではないことは、私にもわかりました。

けれど、私は知っています。
あの二人のツイッターを見る限りでしか、二人の関係性については伺い知ることはできませんが、
少なからずこの二人は何度が喧嘩をしています。

そして、そのたびにうりえるさんに追いすがられて、仲直りしているのです。

「別れようとしたところで、うりえるさんが竹中さんを話さないんじゃないかな。」

私は奈美ちゃんに問いかけました。

「確かに、あの男は自分のことを追い回してくれるような女を好む傾向にはあるね。
確かに容易じゃないと思うよ。
けれど、今回ばかりはわからないだろうね。」


そして一息ついた後、奈美ちゃんは続けました。

「竹中がね、しろの近況についてたやらと聞いてくるんだよ。」

「私の?」

あんなにうりえるさんにご執心の竹中さんにとって、私のことなど、頭の片隅にすらないと思っていたので、本当にそれは、思ってもみない言葉でした。


「そう。あんたの近況だよ。
また体調壊したりしていないかだとか、仕事には戻れたのかとか、無理していないかとか。
彼氏でもないくせに、そんなこと聞いてどうするとは言ってるんだけどね。」

全くその通りです。
浮気のこと、それを隠して自分の都合のいいことばかり口にして別れたこと、
私は許したわけではありません。

「随分と調子のいい男だね。こっちの気も知らないでね。」

「まったくだよね。
まあ、勝手に死んだことにされても困るから元気にしているよとだけは伝えた入るけどさ。」


別に、竹中さんの中では、私は死んだことになっていてもいいんじゃないか、
そう心の片隅で思ったのも事実ですが、奈美ちゃんの好意を無下にすることもできないので、その言葉は呑み込みました。


「さっき、あんた、『あの男は自分のことを追い回してくれるような女を好む』って言ったじゃん。
あいつ、本当に馬鹿だなって思うんだけど、あんたのこと振っておいて、本当はあんたに追いかけてほしかったみたいだよ。」

「……は?」

思わず、不快感をあらわにしてしまいました。


「なんでもね、そうやって自分が逃げても追いかけてくるような女を大切にしていきたいんだって。
そうやってある意味ふるいにかけているというか…。
だからあの時も、あんたに追いかけてほしいって気持ちがあったみたいだよ。
仕事とはいえ、9股もかけていたような男のくせに、本当に虫のいい話だけどね。」


本当にその通りだと思いました。

けれど、私は直感的に感じました。
この人は、本当に自分に自信がない人なんだなと。
自分には価値がない、生まれてこなければよかった存在という決めつけが、いまだに心の中にあるのだなと。

だから、あえていろんな人を試して、ふるいにかけて、最後には誰も残らない…。
ちょうど母親に甘える子供のように、両親を試す幼子のようなことを繰り返してきたのでしょう。
そんな状況の中を、ずっと生きてきたんだろうなと、容易に想像できました。


「けど、あんたはそういうタイプじゃないでしょ?」

奈美ちゃんの問いかけに、私は返します。

「そうだね。多分、付き合ってしまえば相手を疑いたくはないから、試すことはしないかな。
特に竹中さんは『浮気はしない』って約束したうえで付き合っていたからね。」


「だろうね。
そんなあんただから、あんたは奴からの別れを素直に受け入れた…。そういうことだよね。
けど、あいつにとっては、それは誤算だったらしいよ。

あんたは追いかけてこなかった。それどころか、あんな男に感謝の言葉さえ伝えて立ち去った。
これがかなり刺さってしまったみたいだよ。

確かに9人の中の一人だったかもしれない。けど、奴にとっては、決して金として扱うことのできない唯一の存在があんただったんだよ。
それを、自らの自信のなさと甘さで手放したわけだ。本当に、バカな男だよ。」


奈美ちゃんは、竹中さんの生い立ちのことは知らないようでした。
だから、簡単に竹中さんの行動をバカだと批判できたのでしょう。

確かに、私も、試された側としては、まったく怒りを覚えないわけではありません。
けれど、怒りよりも先に哀れさを感じてしまいました。


ーあの人が欲しかったのは、ただの彼女じゃなくて、お母さんだったんだー


「あまりの馬鹿さ加減にさ、もう面倒だから一から教えてやったよ。
どうしてあんたが、竹中の後を追わなかったか、
それと、それまでどれだけ信頼されていたか、そしてどれだけひどいことをしでかしたのかをね。
そうしたら、あいつなんて言ったと思う?」


私が答えが見つけられず困惑していると、奈美ちゃんは教えてくれました。


「『しろは、もう俺のもとには帰ってきてはくれないんでしょうか?』だとさ。
今更もう遅いって話だよね。
だから言ってやったよ。『9股かけて、なおかつ表でうりえるうりえるってのろけてる男のところに帰るほど、あの子は馬鹿じゃないんだよ。あんたやあんたが売ろうとしてる、頭の悪い女連中とは違うんだよ。』ってね。」


あんたみたいな人間をただひたむきに信じていた女を裏切った罪は、本当に重いと思うよ。
もう二度と表れないだろうし、しろにしたって、9股は知らないとしても浮気の事実は知ってるんだから、もう帰ってこないかもね。


私のことを思ってというのもあるのでしょう。
奈美ちゃんは竹中さんにそう伝えたそうです。


すると、竹中さんは奈美ちゃんに向かってこう宣言したそうです。



「俺はこれから、うりえるも含めて、全員の女を切ってきます。
しろ以外はいらない。」