私は再び、あの男に会う決意をしました。

会ってどうするのか。

私はその前日になっても、何も答えが浮かびませんでした。
相手がどう出るのか、
全く見えずにいたからです。

会うだけあって、そう一度はっきりと別れを告げられるのか…。

本来なら、もうすっかりお別れした身なので、向こうにとってもそうする必要がないことも分かり切ってはいました。

しかし、私はまだ恐れていたのです。
そして、怖かったのです。また、この人によって傷つけられることを。

けれど、「会わない」という決断も、私はできずにいました。


のちに知ったことですが、奈美ちゃんは奈美ちゃんで、相変わらず竹中さんに、再三注意をしていたそうです。
これ以上、しろを傷つけるようなことはしないようにと。

そして、会う約束をしていた前の日になり、ついに、
いえ、やっと、竹中さんもうりえるさんから逃れることができたそうです。

もともとは、どちらから近づいたのかはわかりません。

しかし、この頃には、竹中さんにとって、うりえるさんは恐怖を与える存在でしかなかったそうです。

とにもかくにも、当日までに、竹中さんはこれまでの女性関係をすべて清算出来たそうです。



そんなことを知らない私は、いろいろな意味で不安を抱えながら、東京へ向かい、車を走らせていました。

本来ならば、新幹線を使用したほうが早く着く距離です。
しかし、車で出向くことで、駐車料金は高くついてしまうかもしれませんが、
万が一の時に「今日は車で来たからお酒は飲めない。」とお酒を断ることができますし、
危険を感じたら、すぐに終電などの時間に左右されることなく、地元に逃げ帰れるからです。

会いたいという気持ち半分、信用できないという気持ち半分のまま、私は現地へ向かっていました。

途中、心配していてくれていた高杉が、仕事の合間を見ては何度も連絡をくれていました。
今どこにいるのか
無事に現地までたどり着けたのか

高杉と奈美ちゃんだけには、今回のことについて事前に話してありました。


しかし、奈美ちゃんは仕事が忙しく、ほとんど連絡が取れずにいました。

私は、高杉に休憩ごとに連絡を入れて、安否を知らせていました。
天候には恵まれていましたが、どうしても落ち着かない心境の中での運転です。
事故の可能性だって上がってしまいます。

けれど、高杉が必死に、冗談を言いながら連絡をくれていたおかげもあり、無事に宿泊先のホテルにチェックインできました。


待ち合わせは、竹中さんのお店が閉店してからです。
どうしても日をまたいでしまうでしょう。

夕方にホテルに入った私は、気持ちが落ち着かず、思わず「何をして時間を潰したらいいかわからない」と、高杉に連絡してしまいました。


すると、
「まずはゆっくりお風呂に入って体を休めること!長距離運転で疲労しているからね!
それから、睡眠不足は肌にもよくないから、かなり時間が早いけれど、お風呂を上がったらすぐに寝ること!
って、俺はお前のマネージャーか!!(笑)」

高杉の返信には、少し笑ってしまいました。
けれど、確かに体も疲れていたので、高杉の言うとおりにかなり早めに就寝し、
約束の刻限である3時に合わせて起きて準備をしていました。


結局、竹中さんのお店の閉店作業が長引いてしまったために、5時前まで私は待機することになってしまいましたが、
新宿での一人での飲み屋での待機に比べれば、大したことはありませんでした。


そして、ようやくその時は来ました。

「今からそちらに向かう」

私は自分の宿泊していたホテルの前で、竹中さんを待ちました。

程なくして、その人は姿を現しました。
しかし、その姿は、とても私と同い年とは思えないほど、
以前に比べて疲れ切っており、5歳くらいは上に見えました。

前回会ってから今回再会するまで、半年も経っていないはずです。

なのに、この半年間で、竹中さんはかなり年を取ったように感じてしまいました。