我慢の日々は、1か月以上は続いていました。

徐々に、私の心も壊れ始めていました。

ー何のために、あんなに必死に復縁を迫ってきたのだろうー

心ここにあらずな状況で、淡々と私は私の仕事をこなしていました。


そんな日々が続くとある平日の午後。
夕ご飯を作りながら、私は彼と別れた際に作った新たな配信アカウント「はる」として、雑談しながら配信をしていました。

あまりまじめに意気込んで作ったアカウントではなかったので、配信自体もいい加減なものでした。
話したいことをのんびりと話す、飽きれば黙る、それくらいいい加減なものでした。


そこへ、見たことのないアイコンの男性視聴者さんがやってきました。

「初見です。この歌い手さん好きなんですか?」


私はその時、自分の好きな歌い手さんの曲を流しながら配信をしていました。
今でこそ配信サイトによってはできないことかもしれませんが、その当時は全く規制がなかったのです。


「そうですよー!これ知ってる人、初めて会えた気がする!」

マイナーな方ではありませんでしたが、あえて配信などで使用する人は少ないような歌い手さんの曲でした。ましてや、これまでも使用させていただいていた曲でしたが、その話をしてくる人は初めてだったので、驚きました。


その方のアカウント名はレリックさんでした。
もちろん本名ではありません。

けれど、レリックさんは特に面白くもないような私の配信に、毎日のように顔を出していました。
いえ、むしろ、ずっと居座っていました。

特に何かをするわけではありません。
けれど、ほぼ毎回、最初から最後までいました。
ネットとは言え、何か間違いがあってはいけません。私はそれとなく、自分には彼氏がいて、他の誰かと付き合うつもりは毛頭ないということを話していました。

しかし、レリックさんの反応は特に変わりはありませんでした。

ーあ、この人は特にネットに出会いを求めているわけではないんだー

少し安心しました。
また、レリックさんには、ストーカーのような嫌な感じは全くありませんでした。
自分は自分で作業用BGMに私の配信を聞いているような感じでした。


私としても、時間が空いていて、かつ彼からの連絡を待っていて寂しい時などにしか配信はしていませんでした。
ですので、レリックさんをはじめ、出会いを求めているわけではないけれどただ何となく配信を聞いている人がいて、私は離したいことだけ話す…。いい気晴らしにはなっていました。


けれど、所詮気晴らしは気晴らしです。

心の傷は日を追うにつれ、広がり、そして深くなる一方でした。
事実、彼からの連絡も本当に途絶えがちになっていました。


そんなある夜、いつものように、気晴らしに配信をしていました。
時間帯もあるのでしょう。
もともとそんなに人が多く来るような配信ではありませんでしたが、その日はレリックさん一人だけしかいませんでした。

私は、レリックさんには自分には彼氏がいることも、また他の誰とも付き合うつもりはないことを話していましたので、ある意味油断していました。

誰も来ないので、何の気なしにレリックさんに悩んでいたことを打ち明けてしまいました。

彼から一度捨てられたこと
なのに彼に懇願されて復縁したこと
そしてその彼からほったらかしにされていること

後半は泣きそうになっていました。
いえ、これが泣きぬれていたかもしれません。


レリックさんは私の話を頷きながら聞いていてくれました。

しかし、その場は配信サイトであり、いつ誰が来るかもわかりません。
私はかなり抵抗がありましたが、結局レリックさんとLINEを交換することにしました。


ー男性の目線のほうが、私や奈美ちゃんだけで悩むよりも、いい解決法が見つかるかもしれないー


けれど、LINE交換はしたものの、私は通話どころか、あまり連絡もろくにとっていませんでした。
どこかで、彼に対して後ろめたさを持っていたのかもしれません。

必要以上に、連絡はしていませんでした。
むしろ、私からの連絡は皆無だったと思います。


だって私は、あなたの彼女ではなく、あくまで竹中さんの彼女なのですから。