バカを見た正直者

ーネット恋愛や、ネットからの恋愛をしているあなたに読んでほしいブログー

2019年05月

ネット恋愛から、普通の遠距離恋愛へ…。

始まりこそネットでしたが、私たちはどこにでもよくいる、普通のカップルになれました。


もちろん遠距離恋愛なので、なかなか会う事はかないませんでした。
しかし、これも天の計らいというものなのか、
地方に住む私でしたが、このころから彼の住む東京や、関東方面への出張が増えてきたのです。


私たちは、出張の時間の合間を縫ったり、
休日などを利用して、たびたび会う事にしていました。


会えないときは互いに連絡をこまめに入れて、お互いの心の距離は安定していたと思います。



安定していたからでしょうか。
彼は、自身の仕事の内容について、私に話をしてくれるようになっていました。


彼は、以前にも話した通り、キャバクラでボーイをしています。

決して表舞台に立つ仕事ではないそうですが、
キャストさんと呼ばれる女性たちの管理や、接客の指導、メンタルケアなど、
キャストさんにまつわる仕事はかなり多岐にわたるようです。

私は、あまりそういう世界とはご縁がなかったので、そのような話を聞いても、あまりピンときませんでした。

皆さんが皆さん、そうではないと思うけれど、そのようなところに在籍していらっしゃる女性は、
私が知らないようなご苦労も多いに違いないし、
そして、それを支え彼女らのモチベーションを上げ、仕事をさせている彼の苦労も相当なものなのではないか…。
そう、思っていました。


特に、彼の職場では色管理(恋人のような関係になって、キャストさんのモチベーションを上げるとともに、店をやめられてしまうのを防止すること、だそうです。)は禁止されているとのことで、色管理にならないギリギリのところで彼女らを管理するというのは本当に大変だと、愚痴をこぼしていました。



ちょうど最近、新宿にてホストの方が刺されるという事件がありました。
刺した側と刺された側の、本当の関係性はご本人たちにしかわからないものかもしれません。

ただ、「被害男性のことを好きで好きで仕方なかった」「一緒にいるときに他の女性から電話がかかってきた」などが動機なのではないかと、あちらこちらで噂されています。


彼もホストではありませんが、それと近い世界に身を置いている以上、
いつ、どのような形でそういう事件に巻き込まれるかもわかりません。



本当に「大変なお仕事」という一言で片づけられないと感じる反面、
そういう中でしか生きられず、また、そういう中で生きてきた彼の中の闇を見た気がしました。



「これだと決めた女性以外は、金だとしか思わない。」


彼の生い立ちのせいかもしれません。
生い立ちのせいで、このような仕事に就き、
その環境の中で、このような暗さを持つようになってしまったのかもしれません。


いずれにしても、私は一般職で、食べるに困っているわけでもなければ、
声をかけられてもそのような仕事に就くことは今後もないでしょう。

彼自身も、それは重々承知していたようです。


本来ならば、私も縁がなかったはずの世界。

そこへ落ちていき、今はそこでしか生きられない彼。


私はただ、彼の仕事を理解し、陰ながら応援することしかできませんでした。




しかし、危うい世界にいる彼ですが、
私との未来の展望については、かなり明るく考えていたようです。

未来といっても。結婚だとか、そういう確定的なものではありません。


私の持っている資格は少し特殊な資格であり、国内であれば、どこでも求人があるような国家資格です。
それに対し、彼は今はこの仕事でしか食べていけないので、東京を出ることはできません。

そのため、結婚ではなく同棲という形で何とか近くにいることはできないかと画策してくれていました。


二人で住めるアパート、
私の職場、
もし可能ならば、私が現在勤めている職場と同系列の職場がないかなど、調べてくれていました。


ーこの人は、今度は本気なんだなー


私は、前回の裏切りをどこかでずっと恐れていましたが、
彼の姿勢に少し安堵しました。


今度こそうまくやれる。

そう信じていました。

竹中さんのことを思えば、心に巣くう喪失感は鳴りを潜め、
竹中さんのことを忘れれば、喪失感は増すばかり…。


喪失感と、竹中さん、そして竹中さんと心の距離を縮めた先に出てくるかもしれない深い悲しみの間で、
私の心はすっかり疲弊していました。


すぐ近くに、私の心の隙間を埋めてくれるような人がいればよかったのかもしれません。
しかし、そんなに都合よくはいきません。


周囲には強がり、竹中さんには直接的な言葉で表現はしなくても、甘えてしまう日々が続いていました。


竹中さんから逃げる私、
竹中さんを恐れる私、
竹中さんを必要としている私、


どれも私自身でした。


そのような日々が続いていくと同時に、
進むことも引くこともできずにいる私をよそに、
竹中さんに忍び寄る女性の影は何人もいました。


私という配信者が「出会い厨」と呼ばれる人たちに囲まれていたのと同じく、
彼もまた、配信者として常に「出会い厨」と呼ばれる人たちに付きまとわれていました。


しかし、どの人も所詮はネットの中だけの人なので、初めはあまり気にしていませんでした。


けれど、いつしか、その出会い中に囲まれる竹中さんを見るのも、少し辛くなっていました。


竹中さんに焦がれる私


また新たに、私の中に新しい私が、生まれてしまいました。
いえ、復活してしまったと言ったほうが良いのかもしれません。



そんな日々が続いた、ある雪深い日。

いつものように竹中さんと通話をしていると、不意に竹中さんは私に言いました。


「今、何人かの人に言い寄られてるんだけど、どの人も実際にあったことない人たちなんだよね。
それに、ああいうのに限って、他の配信者にも同じことしているもんなんだよ。」

私は黙って聞いていました。
竹中さんに、私も彼女らと同じく、他の配信者さんと仲良くしていると思われているのだろうか…。

そんな風に考えていると、竹中さんから言葉が続きました。


「しろは実際に会ってるし、そういう女じゃないって俺はわかってる。
ネットであちこちにしっぽを振りまくっているような女じゃなくて、本当ならネットなんかにはいないようなちゃんとしている人だった。

俺は、しろと、ネットではなくて本当の意味で恋人として付き合いたい。」



今度は迷いませんでした。

ネットの私ではなく、現実の私を見て、お付き合いを申し込んでいてくれる竹中さんを、疑うことなんてできませんでした。


「うん。今度はちゃんと、本当の彼氏になってね。私もネットじゃなくて、本当の意味で亮平くんの彼女になる。
もう、浮気しちゃだめだからね。」



何年ぶりでしょうか。
私の目からは、嬉し涙が流れていました。


こうして、私は、今度はちゃんと顔も合わせたことのある「竹中亮平の彼女」になりました。

宙ぶらりんな気持ちをそのままに、季節は冬を迎え、
気が付けば新しい年を迎えていました。

私は、年が明けても先の震災で空いてしまった心の傷を埋めることができないままでいました。

それまでの友人や仕事を時間を大切にしながらも、
ネット配信者としての自分も捨てられずにいました。


昔から刷り込まれてきた、

「インターネットなんて犯罪の温床だ」

という言葉も頭をよぎりますが、
どうしても自分の一番近くにいる人たちに、本音や寂しさ、喪失感を訴えることができませんでした。


ー自分だけじゃない。
隣にいてくれるみんなだって、みんな傷ついている。―


そうして逃げ込んだ、ネットの世界。

寂しさを訴えることはなくとも、辛い現実から一時的にでも目を背けるには、十分すぎるツールでした。




「あけましておめでとう。今年もよろしく。」


もはや、当たり前のように、竹中さんとも新年のあいさつを交わしました。

もう、竹中さんは一度会ったことのある人間、
決してネットの中だけの存在ではない人間。

相変わらず、他のネットで知り合った仲間とは個人的な連絡先の交換ややりとりは極力控えていましたが、
竹中さんに対しては、これまでと変わらず、遠くに住む友人として、関わりを続けていました。


着かず離れず。


そういう間柄が続いていました。


ネットに長くいる竹中さんには、異性の友人も多くいました。
そして、この頃には、ネット内に「竹中さんの元カノ」という存在が何人もいるのも知っていました。

だから、本来ならば、一夜を共にしたのは紛れもない事実ですが、
傷つかないためにも、徐々にでも良いので、距離を空けていくべきでした。


頭では分かっているんです。
このままでは、また傷つくことだってあるかもしれない、ちゃんとわかっているんです。


しかし、毎日来る連絡、そしてネットで出会ったころのように言葉で直接的に交際を迫られていたわけではありませんが、徐々に詰められていく距離感…。


いつのころからか、竹中さんという存在が、私の頭の中に居ついてしまい、すっかり離れなくなってしまっていました。

このままではいけない、なのに心が付いていかない。

私は、過去に竹中さんから受けた傷のことを思い返しながらも、
少しずつ、深みにはまっていく自分に怯えていました。


詰め寄る竹中さん、
逃げたいけれど逃げたくない私。

心が、すごく窮屈でした。


そしてその心は、どうやら竹中さんにも見透かされていたようです。

地元へ戻り、そして、それまでと同じ日常が帰ってきました。

仕事に行き、アパートに帰って寝て、たまに友人と飲みに行く…。


そんな、それまでと変わらない日常が帰ってきました。

しかし、一つだけ違ったことがありました。
いえ、違ったというのは、少し語弊があるのかもしれません。



毎日、仕事が終わりスマホを見ると、必ず入っている竹中さんからのメッセージ。

確かに、あくまでネット恋愛としてお付き合いしていたころは、これが日常でした。

しかし、れんさんに奪われて以降、毎日毎日、連絡が入るなどということはありませんでした。
それも、用事ではなく、「おはよう」や「おやすみ」や「これから仕事に行ってくる」など、連絡とも呼べないような、してもしなくてもいいようなメッセージでした。


私たちは恋人同士ではありません。

私から別れを告げて以降、そんな話をした覚えはありません。


しかし、交わされるやりとりは、恋人同士のそれと、ほとんど変わりがありませんでした。


戸惑いはありましたが、互いに互いを、その寂しさを埋めるために利用しているだけと自分に言い聞かせ、あまり深い感情を持たないようにしながら、やりとりを続けていました。


ー深入りして、また以前のように傷つきたくないー


そんな気持ちが強かったのだと思います。

体を重ねておきながら、そして毎日、私の仕事が終わるころの時間帯に「お仕事お疲れ様」とメッセージを受け取りながら、
何とも冷酷かもしれませんが、
私は心の距離を縮められないよう、心の予防線を張っていました。


ーここから先へは踏み込んでこないでくれー


そう、いつも願いながら、竹中さんとやりとりをしていました。

竹中さんと一夜を過ごした翌日の昼下がり、
私は新幹線で帰路につきました。


新幹線の中、所在なかったのでスマホを開くと、竹中さんが配信をしていました。

「ほとんど寝ていないはずなのに、本当に元気な人だな。」

そう思いながら、なんとなく私もその配信を眺めていました。


ーさっきまで肌が触れ合うほどにそばにいた人が、今は画面の中にいるー


ネットの世界が長い人にとっては、こんなことはよくあることなのかもしれません。

しかし、初めてそれを体感した私にとっては、先ほどまで肌が触れていた相手と画面の中にいる相手が同じ人だという現実が、不思議でなりませんでした。

ー本当にさっきまでの出来事は現実だったのだろうかー


夢でも見ていたのではないかとさえ、感じてしまいました。

けれど、私の体に残されたものが、それを現実だと物語っていました。



竹中さんは本当にいたんだ。

私は、竹中さんに抱かれたんだ。

あくまで友達でいようとした相手と、私はなんて事を…。

後悔とは少し違う、どこか不安定な心持ちのまま、私は帰りました。

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