バカを見た正直者

ーネット恋愛や、ネットからの恋愛をしているあなたに読んでほしいブログー

Tag:遠距離恋愛

奈美ちゃんからもたらされた情報により、私の竹中さんへの見方は少しずつ変化していきました。


ー生きる世界が違う、
そして、竹中さんの生きている世界では、私は足手まといになってしまうー


竹中さんは、私をその世界に落としたくないから、私を突き放した。
そう思い始めていました。


いえ、そう思わなければ心がもたなかったのだと思います。

過去にも浮気で私と別れた竹中さんです。
今回は浮気ではなく、私のために私を捨てたのだと、そう思いたかったのです。


ーもう、あまり考えないようにしようー


何度もそう思いましたが、実際に、本当の意味でお付き合いをしていた私には、なかなかそこにしっかりと踏み込むことができませんでした。



程なくして私はようやく退院することができました。
そして、職場復帰に向けて、自宅アパートで療養していました。


あまり周囲に心配をかけたくなかった私は、入院していたことすら、本当にごく少数の人にしか話していませんでした。

それゆえ、自宅療養中は、ほとんどの時間を一人で過ごしていました。

たまに暇を見つけて、奈美ちゃんが遊びに来てくれるくらいで、
家のことをする他はテレビを見たりネットを眺めたりして、暇をつぶしていました。


そんなある日、なんとなくTwitterを眺めていました。

みんな元気そうだなあ、そろそろお花見の季節かあ…。

何も考えずにいろんな人のいろんな日常を眺めていると、ある一つのアカウントに目が行きました。


どうやらカップルのようで、アイコンはいわゆるペアアイコン、ヘッダーもお揃いのものでした。
そして、プロフィール欄には、お互いのTwitterIDが記載されていました。



ー仲がいいんだろうなあ。お互いにお互いを、誰かに取られたくないんだろうなー

ーそういえば、竹中さんは一度もこんな風にしてくれなかったな。これまでの彼女たちは、ペアアイコンにしたりしていたみたいだけど、私はしてもらえなかったな。
大事だからこそ、しまっておきたいとか言っていたけど、結局、足手まといになるから、私の存在はひた隠しにしていたんだろうなー


一人でいる時間がなかったせいか、マイナス思考がひどいまま、また涙がこぼれそうになっていました。


何の気なしに、私はそれまで見ていたカップルの、彼氏の方のアカウントの投稿を見ていきました。
すると、見たことある男性の自撮り画像が掲載されていました。

見紛うはずがありません。

竹中さんです。

私は、偶然にも竹中さんのアカウントを見つけてしまいました。


ーそっか。向こうはもう新しい幸せを見つけたんだ。
こんなID載せたりしちゃうくらいなんだから、きっと自慢の彼女なんだろうなー



もしかしたら、奈美ちゃんの言っていた通り、これはネットから始まるスカウトなのかもしれない…。
けれど、この二人は東京と福岡。
ただのネット恋愛なのかもしれませんが、どちらとも言い切れないような、そんな内容でした。

けれど、投稿内容には彼女のことがたくさん書いてありました。
のろけが大半のようです。

本人なりの理由があったにせよ、日陰者にされていた私にとっては、ショックが大きかったです。


けれど、そんな私の気持ちとは裏腹に、私は無心に竹中さんの投稿をさかのぼっていました。

そして見つけてしまいました。

私に別れを告げてきた日の投稿です。

一言、最近うまくいかないことが多すぎる、とだけ書いてありました。
私のことだろうか、と思いながら見ていたのですが、
そのすぐ下、別れを告げてきたよりもさらに3日前の投稿。

「彼女がかわいすぎて死にそう」
「彼女と4時間も通話しちゃった」
「うりたんかわいいうりたんかわいい」


私はその日、通話もしていなければ、うりたんという名前でもありません。

…うりたんって誰…?


話の流れから察するに、このうりたんというのが彼女なのでしょう。
そして、竹中さんとペアアイコンになっている女性のアカウント名も「うりえる」。


どんなにきれいごとを並べたところで、
私はまた、この男に浮気されてしまったのです。


そして、今度は向こうから捨てられてしまいました。
私の頬に、一筋の涙が流れました。


信じた私がバカだったんだ。


思考も感情が動かないまま、ただ両目から涙が流れて止まりませんでした。



その時、部屋のインターフォンが鳴りました。
私は涙を拭いて、モニター画面をのぞき込みました。

奈美ちゃんは竹中さんからの別れの報告の連絡を受け、
いてもたってもいられず、すぐに竹中さんに通話をかけたそうです。

こんな時期に突然別れを告げたこと、本当にはらわた煮えくりかえるような思いだったようです。
私も、もし逆の立場だったら、同じ思いだったでしょう。
実際に行動に移したかどうかはわかりませんが…。


奈美ちゃんの話では、別れを告げた理由は、やはり大筋では私に話していた内容と同じでした。

しかし、「だから何なのか?」とそれぞれきつく問い詰めたそうです。
奈美ちゃんはやさしい人ですが、かなり、竹中さんの行動は奈美ちゃんの逆鱗に触れるものだったのでしょう。


奈美ちゃんは、竹中さんの発言の真意を私に話してくれました。



まず、竹中さんの話していたスカウトについて。

夜のお店に女の子をスカウトするということは、本来ならば犯罪に当たるそうです。
私は本当に世間知に疎く、違法行為であるという事すら知りませんでした。

そして、竹中さんの話していた「ネットでのスカウト」。
他の方の手法はわかりませんが、奈美ちゃんの話によれば、竹中さんの手法はこうだそうです。

まず、ネット配信などで女の子と仲良くなり、個人的な連絡先を交換します。
竹中さんが言うには、病んでいるような女の子がねらい目なんだそうです。
そして、恋愛感情を匂わせながらある程度仲良くなってきたら、頃合いを見図り、会う約束を取り付けるそうです。
もちろん、仕事の話とは言わずに、あくまでデートとして誘い出します。

誘い出し、ひとしきりデートをした後に、
「実は、こういうお店があるんだけど…。」
といって、キャストとして勧誘するそうです。


この時に、LINEやメールなどを使用して勧誘してしまうと「証拠」が残ってしまうため、あくまで会って話を進めるそうです。


竹中さんの「これからかなり時間がとられる」という言葉の意味するところは、こういう事だったようです。

また、自分がスカウトして女性を入店させると、スカウトバックという報酬が支払われるそうです。

そしてその報酬は、何も自分の所属する店に限ったことではないようです。


竹中さんの場合は、北は北海道、南は沖縄まで全国各地に「ネット上で」仲の良い女性を作り、
色恋を匂わせ、その地域地域の同業者に売り込んでいたそうです。
もちろん、対価をいただきながら、です。


「これと決めた女以外は、金にしか見えない。」


竹中さんがいつぞや漏らした言葉の意味が、分かったような気がしました。



竹中さんの歩んでいる道は、かなり険しく、危ない道です。
法の抜け穴というものを利用した手口のようですが、本当に不安しかないような世界にいる人なんだなと実感しました。

それと同時に、そういう世界でしか生きられなくなってしまった竹中さんを、かわいそうにさえ思いました。
ただ生きるためだけに、危ない橋を渡る生活…。
幼いころに大きな傷を受けてしまった竹中さんには、それしか道がなかったのでしょう。


しかし、それならば、なぜ竹中さんは私を一度も誘わなかったのか…。

私は思い切って奈美ちゃんに聞いてみました。


「好きだったから、売りたくなかったんだそうだよ。
大事にとっておきたいから、職場の仲間以外には存在すら隠していたらしいよ。

もちろん初めは、そういう目的もあって連絡先も聞いたのかもしれないけれど、
やっぱり自分だけの『高嶺の花』とやらを汚したくなかったんだとさ。

あんたは無駄にコミュ力もあるから、確かにそういう世界では高く売れるだろうよ。
スカウトバックとやらも、その辺のネットがお友達の引きこもりをうるよりかは、かなり入るだろうね。

実際、あの男の職場の同僚からも入店の誘いがあったらしいけど、あの男は断ったらしいよ。」



ーそうか、竹中さんなりに守ってくれたのかー


少し竹中さんの優しさに恩義を感じながらも、歯がゆさも感じました。

私も、竹中さんの支えになりたかったのです。
エールをありがとうなんていわれましたが、そんなものではお腹は膨れません。


ー私は役立たずー


そんな思いが、頭の中から抜けずにいました。

目を覚ました時には、私はICUのベッドに寝かされていました。

なんでも、例のメッセージを竹中さんに送信した後、
スマホを握りしめたまま、病室のベッドの上で意識を失っていたそうです。


一時は危篤状態に陥り、本当にかなり危ない状態だったそうです。

それまでも三途の川を渡りかけたことは何度もありましたが、今回はなかなか持ち直せず、担当の先生や看護師の方々も「今回はもうだめかもしれない」と思ったそうです。


そして、ようやく目を覚ましたとはいえ、高熱も続いていれば血圧も安定しない状態で、意識はもうろうとしていました。

けれど、しっかりとこれだけは覚えていました。


ー私は竹中さんにフラれたー


涙ばかりがこぼれました。


やがて、心が死んだまま、容態も一応安定したということで、もともと居た一般の個室に戻されました。
ICUに入ってから、約一週間ほどの月日が流れていました。


落ち着いたころ、奈美ちゃんがお見舞いに来てくれました。

食欲がなく、奈美ちゃんに差し出されたケーキを、私はどうしても食べる気になれず、フォークを握ったままの手は、奈美ちゃんから差し出された時そのままでした。


「なに?食べないの?」

奈美ちゃんは私に問いかけました。

「ごめんね。食欲がないんだ。」

私は答えました。
すると、奈美ちゃんは無言で立ち上がり、私のケーキを自分のフォークで掬い、
空いた手で私の頭を掴み、無理やり私の口にケーキを放り込みました。

あまりに突然だったので、私はむせこんでしまいました。


「あんたねえ、食べないと体力だって戻らないし、殴り込みにだって行けないよ?」


……殴り込み?

どこに殴り込みに行くんだろうか…。
私が考え込んでいると、奈美ちゃんは話を続けます。


「竹中の奴、一発殴らないと私の気が済まない。
しろをこんなにして!別れ話をするにしたって、時期を考えろって話だよ!」


ーそっか、奈美ちゃんは竹中さんに対して怒ってるんだー


「奈美ちゃん、ありがとう。私のために怒ってくれて。」

口をついて出た言葉は、感謝の言葉でした。
しかし、奈美ちゃんは続けます。


「あんたのためだけじゃないよ。私もあの男は個人的に許せない。
許す価値もない。」


聞くところによると、竹中さんは奈美ちゃんに、私と別れたことを伝えていたそうです。

奈美ちゃんは、あまりに唐突だったこと、そして時期も考えなかった竹中さんに腹を立て、理由を問いただしたそうです。

おおむね、私に話していた内容と同じでしたが、奈美ちゃんはどうしても竹中さんの考え方、行動が許せず、さらに問い詰めていったそうです。


そして、最後の誠意のつもりだったのでしょうか。
竹中さんも奈美ちゃんからの問いに、素直に答えていたそうです。


「辛い話になるかもしれないけど、あんた今聞きたい?」


少し迷いました。
もしかしたら、本当に怖い、耳をふさぎたくなるような事実が隠されているのかもしれない…。

けれど、私はこれ以上、長く落ち込んだ日々を過ごすのは嫌でした。
苦しい現実から目を背ければ、背けていた時間の分だけ、私は立ち直れずにいるんじゃないか、そう思ったのです。


「奈美ちゃん、お願い、聞かせて。
どんな内容でもいいから。」


私は、すべての事実を受け入れる覚悟をしました。


私の体調は、私が思っていたよりも芳しくないものでした。

「どうしてもっと早く受診しなかったの!?」

何人もの医師に言われました。

発症した時は本当に様々なことがうまくいっていて、この流れを腹痛ごときで止めたくなかったという思いが強すぎたのでしょう。

実際は「腹痛ごとき」なんて馬鹿にできるような様態ではありませんでしたが、
本当に、その時の良い流れを崩したくなかったのだと思います。


何日もの間高熱が続き、ほとんど食事もままならない状況でした。

彼との連絡も私が止めてしまうことも多く、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
けれど、彼は決して責めずに、私が返事をすればすぐに連絡をくれました。
仕事中だろうが何だろうが、です。

本当に、早く体調を戻さないとなと、おとなしく病院で治療に専念していました。



ある程度、体調が安定するまでに、何度も三途の川を渡りかけてしまいました。

しかしそのたびに何とか持ちこたえ、入院から2か月たつ頃には、丸一日起きていられるまでに回復しました。

もちろん、この間、彼には一度も会えていません。

けれど、私の状況を彼に伝えたり、画像を撮っては彼に送ってくれていた人がいました。


奈美ちゃんという方です。

もともとは私の友人でしたが、ご主人の仕事の都合で東京と自分の仕事のある地元を行き来する生活をしていました。
ゆくゆくは地元を離れ、ご主人の住む東京に居を移す予定だそうです。

そして、彼とは、私より一足先に、ネット上で知り合っていたそうです。
私も言われるまで、全然気が付きませんでした。

奈美ちゃんはたびたび私の地元に来ては、彼に私の近況を伝えいてくれていました。
意識がもうろうとしている中では彼に「生きているよ」と連絡することすらつらかった中で、
奈美ちゃんの存在は大きな支えになりました。


そして、もうすぐ退院できそうな兆しが見えてきた、ある夜のこと。


彼から連絡がありました。
いつも通りの互いの近況の報告など、他愛のない会話でした。

しかし、彼は突然こう切り出しました。



「しろ、一旦友達に戻ろう。
お互い一旦、距離を置いて見つめなおそう。」


唐突でした。


しかし彼は続けます。

「最近、スカウトやネットからのスカウトの仕事も増えてきて、女の子と食事に行ったり通話ばっかりすることが増えてきてるし、時間もかなり取られてる。」


ースカウト?ネットからのスカウトってどういうこと?―


「とても俺も辛い選択だけど、色管理もさせられてるから、焼きもちも妬かせると思う。」

「ボーイである以上、俺は恋愛には向いていないと思いました。」


ー知り合った時からボーイだったじゃない!今更職業なんて関係ないでしょ!―


「これは好きじゃなくなったからとか、しろが悪いとかじゃない。友達にも相談して、やっぱり別れたほうがいいなと思いました。
これ以上、自分の仕事のことで、病んでしまうしろは見たくない。」


ー確かに仕事が理解できなくて、それでも理解したくて自分なりに勉強した。亮平くんにも聞いたりもした。けれど、そんなの今更じゃない!
そもそも。その友達って誰?勝手なこと言わないでほしいんだけどな!―


「大好きだからこその決断です。」


ー大好きだから、その大好きな人とのことを私をよく知りもしない人に相談して、そして一人で勝手にこんな決断したんだ。―


「スカウトの仕事も本格的に始めました。だから、これからはどんどん時間が無くなると思う。
それに、夜の仕事をしている以上、やっぱり恋愛には向いていないなって思いました。」


頭の中ではいろいろ、言いたいこともありました。
けれど、すべては展開の速さと、ショックで、喉元まで来ては落ちていきました。


「いつもエールをありがとう!!それが俺の仕事のモチベーションです。
それと同時に、自分の中で、仕事の関係上とはいえ深くかかわっていることに罪悪感を感じていて、申し訳ないなと。

俺が一般の職業に戻ればそれが一番だけど、昼の世界は厳しいのです。僕のような人材はいらないのです。

こんな俺を大好きでありがとう。
だけど、俺といちゃいけない。
まっとうな道を歩んでいる、汚れていない人と恋人になった方がいい。」


ーそれは、本音ですか?友達に入れ知恵された文章ですか?―


けれど、寂しい、悲しい、また一人になった、一番に愛していた人を、また失ってしまった。


悲しみや混乱や怒り…
よくわからない感情で頭の中はいっぱいいっぱいでした。


ーこのままお返事をしたら、ただの喧嘩別れになってしまう。
この人にとっても、入れ知恵とかではなく、本当に苦渋の決断だったのかもしれない。
そんな人を責められない。―


私は、混乱したままお返事を返すことができず、
彼に少し待ってもらうことにしました。


「ちょっと待ってね。今、大事にお返事書いてるから。」


そう伝えて、少し時間を空けて彼に返信を送りました。


「お仕事お疲れ様です。
忙しいのに、いつも空いた時間に連絡をくれたこと、本当に嬉しかったです。
不謹慎かもしれないけど、今日だってたくさんメッセージ暮れて嬉しかったよ!

たくさん支えてくれてありがとうね。
大好きな人に支えられて本当に嬉しかったし、本当に死にかけたけど、生きててよかったって心から思えた。

それから、亮平くんの心の内が汚れてるなんて思ったことは一度もないよ。誰よりも優しくて、愛情深い人です。私は、その愛情と優しさに救われていました。

同時に、甘えてばかりの自分が情けなかったです。
偉そうに国家資格掲げて、夜の女の子よりも苦労せずに稼いでいる私なんて、本当に弱い存在です。
亮平くんは、私よりも、本当に強くて優しい人です。
そんな亮平くんにいただいた優しさと愛情を、倍にして返したかった。

元気になったら、いっぱいいっぱい返そう!
優しさと深い愛情に触れるたび、そう思っていました。


一般職だろうと夜職だろうと、これからも亮平くんを応援しているね。」



涙でぐしゃぐしゃになりながら返事を打ちました。
そして、打ち終えたころには、もう、私の体力も限界でした。



「気持ちが弱ると体も弱るぞ。
だから、はったりでもいいから気持ちを強くもて。」


震災の後、いろんなもの、いろんな人、すべてを失ったような気がして、避難所でショックからご飯も食べれずに一人うずくまっていた時、
支援物資のおにぎりを片手に私に声をかけてくれた、知らないおじさんの言葉です。


ーおじさん、気持ちが弱ると体も弱るって本当だね。
私にはもう、これ以上のはったりはかませないよ。―


遠ざかる意識の中、あの時にあった名前も知らないおじさんに話しかけてました。

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